耳の手入れについて

犬は耳の手入れを怠るとすぐ外耳炎になってしまう子が多いです。逆に猫は手入れの必要はあまりありません。
そこで毎日のケアーが大切になってきます。それぞれのパターンに分けて説明します。

耳の中に毛が生えている場合
ミニチュアシュウナウザー、プードル、マルチーズ、フォックステリアなどは、外耳の内側の部分に細かい毛が生えています。そのままにしておくと耳垢の成分が毛に絡みついて、外耳炎になってきます。まず毛を抜きましょう。トリミングに出すときにトリマーさんに耳の毛を抜いて下さいと頼んでおけば、OKです。
家でも少しずつ指が届く範囲で結構ですから、抜いてあげましょう。

べっとりの耳垢が多い場合
そもそも外耳には耳垢腺から白っぽい油の成分が分泌されます。耳垢がものすごく多くいつも外耳の表面を覆っています。レトリバー系、シーズーなどはこのタイプです。 放っておくとマラセチアという真菌が繁殖してきて、赤黒い耳垢がいっぱい出てくるようになります。レトリバーではだいたい生後4ヶ月を過ぎるとこうなってくる子が殆どです。黒い耳垢が出てきたら獣医師の診察を受けましょう。
家での予防は、シャンプーの時によく耳を洗うことです。耳介はシャンプーをつけてよくもみ洗いしましょう。すすぎの時にシャンプーが残っていると皮膚炎の元になりますからよくすすいで下さい。弱い水流で耳の中に水をいれて頭を振らせて下さい。 片耳で10回ぐらいしましょう。すると水と一緒に中の汚れや、シャンプーがきれいにでてきます。ついでに眼もシャンプーが残っていたりしますので、よくすすいでおいて下さい。 鼓膜がしっかりしていれば耳の中には水を入れても大丈夫です。頭を振ったときに水が耳の中に残っていても、ほとんど全部出てきますので安心して下さい。
それでも、耳垢がたまるようでしたらイヤークリーナーをつかいます。クリーナーを数滴耳の中に入れて、頭を振らせないように顔を持って下さい。1分ほどたってから、手を離し頭を2、3回振らせてください。すると耳垢とクリーナーが溶けて一緒に出てきます。耳介に汚れが付着していますのでガーゼで優しく拭いてあげましょう。このとき綿棒を使うとよけいに耳垢を奥に押しやってしまってよくありませんし、綿棒で耳の中の皮膚を引っ掻いてしまうおそれがあります。耳の中の皮膚はかなりデリケートなので綿棒は使わないようにしましょう。週に1回から2回ほど洗浄して、耳の中を清潔に保ちましょう。
もし耳を気にしている、顔を片方に傾けている仕草が見られたら、鼓膜が損傷している可能性がありますから、何も手入れをしないで来院して下さい。

耳が垂れている場合
中が蒸れやすくなっています。シャンプーしたときには必ず水分が残らないようにきっちり乾かしましょう。イヤークリーナーの中には乾燥を促す物もありますから、そういう物を使ってもいいでしょう。

猫の場合
猫は正常な状態では白いどろっとした分泌物をだします。耳垢に色が付くこともありますがほとんどの場合薄い茶色です。正常な状態では特に耳の手入れの必要はありません。外に遊びに行く猫はミミダニをもらってくることがあります。ミミダニにかかるとフケのような乾燥した茶色の耳垢が沢山出てきて、かなりの掻痒感があります。そういうときは病院に連れていって下さい。

病気について簡単に説明しましょう。

ミミダニ(耳疥癬)

一緒に生活していたり、接触したなどで、簡単に移ります。非常に痒く、耳の周りに引っ掻き傷が増えてきます。耳ダニは耳鏡やルーペなどでも確認できます。

ミミダニ(成虫)

ミミダニ(虫卵)

マラセチア性外耳炎

レトリバー系で黒い耳垢がたまっているのは9割マラセチアというカビです。 耳垢を顕微鏡でみると酵母様のカビが確認されます。ひどくなってくると炎症が始まり、痒みがまし腫れてきます。 マラセチアは犬では常在菌ですので、皮膚の表面にはいてもおかしくないのですが、耳の中はマラセチアの栄養源となる耳垢腺からの油分がかなり豊富に分泌されており、さらにたれている耳なので中が蒸れやすくなって、マラセチアが繁殖しやすい環境になっています。勝手に治るというのはあまりないようです。治療と毎日のケアーが必要になります。

マラセチア(酵母様真菌)

細菌性外耳炎

外耳が細菌によって炎症を起こします。起炎菌にはstaphylococus intermediusやPseudomonas aeruginosa等が原因になりますが、これらも常在菌ですので、アレルギー、シャンプーのすすぎ残し、汚れた河川に入った後、免疫力の低下などで、発生します。

中耳炎

鼓室包と呼ばれるところに膿がたまったりします。中耳炎になると耳の奥が痛くなるようですが、動物の場合は、訴えてくれないので見過ごすことが多いです。おもに風邪などから炎症が波及してなります。

内耳炎

中耳炎からの炎症が波及して内耳まで及ぶと斜頚といわれる症状が発生します。常に頭を斜めに傾けたり、旋回運動をしたり、立っていられなくなるのもいます。

腫瘍

扁平上皮癌や悪性黒色腫などは皮膚のどこでも発生しますが、特に老齢の白い猫の耳介には扁平上皮癌が発生しやすいです。

耳血腫

外耳炎などで頭をよく振ると耳の血管が切れて軟骨と皮膚の間に出血します。すると耳介が球状に腫れます。ものすごくいたいので更に頭を振ってよけいにひどくなります。中には自己免疫疾患の子もいて、そんな症状はないのにいきなり耳血腫になったりします。

耳垢腺の過形成

老齢化してくると耳垢腺が腫れてきて、耳道をふさいだりします。ほとんどは外耳炎の起こっている物に併発して、耳道をふさぐためにますます悪化します。放っておくと希に腫瘍化したりします。

糸状菌

Microsporum canisが寄生して、皮膚の表面に落瘡を作ります。耳介に多く出来やすいです。全身に感染することもあります。これはヒトにもうつります。

アカラス

(イヌニキビダニ)毛根に住み着くダニです。一般に免疫が弱い犬に感染するとされています。目の回り、口の周り、指、耳介の縁などに症状が強く出て非常に痒くなります。

疥癬

皮膚の中にトンネルを掘って寄生します。他の動物の接触感染によってうつります。

さいごに
外耳炎はそれぞれの病気にあった治療が必要です。動物は調子が悪いからと入って自分では病院には行きません。動物の病気は飼い主さんが見つけてあげなければなりません。それは、他覚症状が出ないと気づきません。既に病気はだいぶ進行しています。一刻も早く獣医師の診断を受けましょう。

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