ジャンガリアンハムスターの子宮蓄膿症

犬は7から8歳以降の高齢にみられ、猫では2歳前後の若齢にもみられる疾患である。
ジャンガリアンでは1歳以降によく見られる。

症状
元気食欲がない。
外陰部からクリーム状の分泌液の排泄している。全く排膿しない場合もある。
腹部の腫大が認められる例がまれにある。

診断 
分泌物があればそれの染色塗沫が確定診断につながる。
塗末標本では、膿球(好中球が細菌を貪食したもの)、粘液、細菌塊などが認められる。
次に超音波検査により膀胱以外の水様物の貯留を確認する。このとき、必ず膀胱との相関関係を確認する。
双角子宮なのでY字型に観察できることがある。
細菌に関しては、感受性試験をすることが好ましい。ついでに細菌同定もしておく。
容体が安定している場合は2日間投与しても変化がない場合、外科的切除をすることを勧める。感受性がある抗生剤を投与したとしても予後不良である。抗生物質の投与で回復した例はみていない。通常は数日以内に死亡することが多い。

 

術前管理
抗生物質の第一選択薬として クロラムフェニコールを投与する。
急性腎不全の予防対策としてラクトリンゲル液の皮下投与をする。


手術方法
麻酔はケタミンのみで処置する。呼吸が止まるとどうしようもないのでイソフルレンなど呼吸抑制があるのもは、使わない方がよい。
麻酔に関しては一番慣れている方法でするのが、よい結果を生む。開腹中にさめてきた場合は腹腔内にケタミンを一滴
滴下する。
顕微鏡下での手術になるが助手も顕微鏡を覗ける環境を用意したい。術式としては犬や猫の方法と変わらないが
子宮や腹腔内臓器は非常にもろくちぎれるので、細心の注意を払う。縫合糸には5-0メディフィットCを使用した。
基本的に出血はさせてはならない。組織の切開、止血にはカウター(EYE CAUTERY model B2585)を用いる。切開に先立って止血操作を行う。

腹壁は5-0角メディフィットCを用いて縫合する。
皮下は特別縫合する必要はなく、皮膚のみ縫合する。
自分で抜糸することが多いため、 エリザベスカラーは最低3日間はつけておく必要がある。
もし時間的な余裕がある場合8-0の眼科用縫合糸で用いると 違和感がなくエリザベスカラーを省略できるかもしれない 

術野の剃毛。綿棒でヒビテンアルコールにて消毒。体の他の部分はできるだけぬらさないようにする。


有窓布の固定。4-0の縫合糸で有窓布と皮膚を4,5カ所結紮する。


卵巣動脈を結紮 

他方の卵巣動脈を結紮。子宮広靭帯を結紮止血して切断。

子宮頸部を結紮、切断。


摘出した子宮。


術後管理
糞が1日に50個以上排便しているか確認する。少ないときは強制給餌をする。
保温はインキュベータにて30℃に維持する。


術後1日目

術後3日目

術後1ヶ月 6/28 術創はきれいに治っている。

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